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見世物 - 「回想録」 高村光太郎

 祖父の弟で甲府に流れて行って親分になった人があるが、これは非常に力持ちの武芸の出来た人で、その弟がついているので祖父の勢力が大変強かった。喧嘩というと弟が出て行った。江戸中の顔役が集まって裁きをつけたりしたことがあったと言う。だから私は子供の時分、見世物は何処へ行っても無代だった。その時は解らなかったが、後で考えるとそのせいだったらしい。よく兄哥連に背負われて行ったものだ。喧嘩の仕方なども、祖父から聞いて知っている。然し祖父が足を洗って隠居してからも連中が祖父のところに出入するのを、父は実に厭がったものだ。





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