top of page

カジノ・フォーリー - 「大井広介といふ男――並びに註文ひとつの事――」 坂口安吾 1942(昭和17)年7月28日

  • 執筆者の写真: 浅草文庫
    浅草文庫
  • 2018年10月7日
  • 読了時間: 1分

 中原中也が文学修業に上京の時にはメンコだのノゾキ眼鏡などボール箱につめて之を大切にいたはり乍らやつて来たが、大井広介はカジノフォリーを始め何万枚のプログラムを秘蔵してそれをみんな暗記し、カクテルブックをこくめいに複写して秘蔵してそれをみんな暗記し浅草の刀屋へ註文して立廻りの竹光や槍を何本となく作らせて毎朝夕の食事毎に食堂で鉢巻しめて立廻りの稽古に余念もなく、一日に三十枚ぐらゐづゝ葉書を書き、来客の顔を見れば得たりとばかり一分間に六万語づゝ喋りはじめ三時間目ぐらゐになつてやうやく彼の喋つてゐることが少し分りかけてくる。尤も、僕はウム/\と合の手を入れてはゐるが実はてんできいてはをらぬ。





Comments


Commenting on this post isn't available anymore. Contact the site owner for more info.
bottom of page