「○○君は死んだ?」
大きな声で、降りてきたのに言った。
「いいや、まだ殺されねえ。――でも、もうすぐ殺されるよ」
「そうか。しからば、急いで食わざなるめえ」
――芝居の稽古であった。一座を組んで、出しものを用意して、映画館のアトラクションとして売り込もうというのであった。その役者の一人が、お好み焼屋の二階に間借りしていたので、とても稽古場にならない狭い二階だったが、席料を取られないところから、借りたのであった。二階にいるその役者は末弘春吉といって、私は下の火鉢で顔なじみであった。浅草に住んではいるが、公園の舞台とは関係のない恵まれない役者であった。そうした役者が老若男女を問わず、公園の周囲に数えきれないほどゴロゴロしている。……
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