浅草六区・活動写真・連鎖劇 - 「野人生計事」 芥川龍之介 1924(大正13)年1月
- 浅草文庫
- 2018年9月13日
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更新日:2018年10月3日
更にずつと近い頃の記憶はカリガリ博士のフイルムである。(僕はあのフイルムの動いてゐるうちに、僕の持つてゐたステツキの柄へかすかに糸を張り渡す一匹の蜘蛛を発見した。この蜘蛛は表現派のフイルムよりも、数等僕には気味の悪い印象を与へた覚えがある。)さもなければロシアの女曲馬師である。さう云ふ記憶は今になつて見るとどれ一つ懐しさを与へないものはない。が、最も僕の心にはつきりと跡を残してゐるのは佐藤君の描いた光景である。キユウピツドに扮した無数の少女の廻り梯子を下る光景である。

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