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矢場・弓場 - 「如何なる星の下に」 高見順 1939(昭和14)年1月-1940(昭和15)年3月

  • 執筆者の写真: 浅草文庫
    浅草文庫
  • 2018年10月29日
  • 読了時間: 1分

「最近、公園のなかに、あちこち、弓場ができたですな」

「――ほほう」

「ほほうッて、倉橋君は気がつかんですか。――駄目ですな」

 雅子は釜の蓋を、おっかなびっくりのように、そっとあけて、なかを覗き込んでいたが、朝野の鋭い語気にパタンと蓋をしめた。

「早くおあがりよ。(そして私にも)さめると、まずいですよ。――戦争の影響ですかな」

「え?」

「弓場はね。――きっとふえると思うですな。きっと流行するに違いない。もともと矢場は浅草名物で、――昔の矢場と今の弓場とはもちろん違うけど、まあ、その復活とも言えるですな」

「なるほど」





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