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見世物 - 「鉄の処女」 大倉燁子 1935(昭和10)年2月

  • 執筆者の写真: 浅草文庫
    浅草文庫
  • 2018年9月25日
  • 読了時間: 1分

更新日:2018年10月3日

 観音様の横手の裏通りにはサーカスがかかっていた。その広告びらの前に夫人は立ち止って少時見ていたが、急に入ってみようと云い出した。事件の調査に来たと云うのにどうしたっていうんだろう。私がちょっと返事に躊躇しているのを見ると彼女は誘いかけるように云うのだった。 「面白そうじゃないの。南洋踊り、鉄の処女、ほら人喰人種もいますよ」 「鉄の処女って何の事でございますの?」 「昔死刑に用いられたものですよ。大きな箱のようなものの内側に剱の歯がいっぱい突き出ていて、囚人をその中に入れ、扉を閉めると同時に体中に剱が突き刺るという仕掛けなんですよ」 「面白そうでございますわね。じゃ入ってみましょうか」

「人間は誰だって残虐性をもってるのね――」



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