日本堤 - 「鴎外の思い出」 小金井喜美子 1955(昭和30)年10月
- 浅草文庫
- 2018年10月2日
- 読了時間: 1分
更新日:2018年10月3日
今まで噂に聞いた道々を、毎日車で通います。野菜市場の混雑を過ぎ、大橋を渡って真直に行けば南組の妓楼の辺になりますが、横へ曲って、天王様のお社の辺を行きます。貧民窟といわれた通新町を過ぎ、吉原堤にかかりますと、土手際に索麺屋があって、一面に掛け連ねた索麺が布晒しのように風に靡いているのを珍しく思いました。
兄のいつもお話になった秋貞という家の前は、気を附けて通りますが、それらしい娘はつい見うけませんかった。縁がないらしくまだ出会いません、などと西洋への手紙に書いたものです。
Comments