「浅草とは?」 - 「如何なる星の下に」 高見順 1939(昭和14)年1月-1940(昭和15)年3月
- 浅草文庫
- 2018年10月29日
- 読了時間: 1分
私はK劇場を出ると、
「雅子に会いたいな。でもひとりでは楽屋へ行けない。やっぱり朝野君がいてくれないと……」
そんなことを心の中でつぶやくと、朝野の顔がぐッと私に迫った。私を憎々しく睨んでいる顔、――つづいて美佐子の「なんで浅草をブラブラしてんの」と言った時の顔が……。
私はそこに、浅草が私を見る顔を、見たような気がした。私が手をさしのべても、その手をうけつけない浅草の顔。私は、K劇場での感動そのものまでが何か浅薄な感激だったようにも思い直されて来た。

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