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「浅草とは?」・見世物 - 「乞はない乞食」 添田唖蝉坊 1930(昭和5)年10月

  • 執筆者の写真: 浅草文庫
    浅草文庫
  • 2018年10月15日
  • 読了時間: 1分

 浅草に現はれる乞食は、みなそれぞれに風格を具へてゐるので愉快である。乞食といふ称呼をもってする事は、この諸君に対してはソグハないやうな気がするくらいだ。いかにこれらの諸君が人生の芸術家であるか、また、浅草を彩るカビの華であるかといふことについて語らう。

 浅草といふ舞台には、かかる登場者が順次に現はれ、消えてゆく。

 指がなくて三味線を弾く男――。彼はロハベンチに腰を掛けてゐる。左の手の指が四本ない。残った拇指で、煙管の半分に折れた吸口の方を挟み、その吸口の膨れた部分、凹んだ部分を巧みに利用して絃をおさへる。バチの代りにマッチの棒で弾く。





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