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浅草の食・今戸 - 「みやこ鳥」 佐藤垢石 1924(大正13)年5月6日

 寮の人々は食いものの贅にも飽きた。明治の中年頃までは大川から隅田川では寒中に白魚が漁れた。小さい伝馬舟に絹糸ですいた四つ手網を乗せて行って白魚を掬ったのである。

 この白魚を鰻の筏焼きの串にさして、かげ干しをこしらえ酒の肴に珍重した。流れの面に、落ちては輪を描く霙の白妙に、見紛う色のみやこ鳥をながめながら、透きとおるほどの白魚を箸につまんだ趣は、どんなに風流なことであったろう。





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