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浅草の食 - 「如何なる星の下に」 高見順 1939(昭和14)年1月-1940(昭和15)年3月

  • 執筆者の写真: 浅草文庫
    浅草文庫
  • 2018年10月29日
  • 読了時間: 1分

 愛玉只(オーギョーチ)は、黄色味を帯びた寒天様のもので、台湾の無花果の実をつぶして作るのだそうだが、それを賽の目に切ったのの上に砂糖水、氷をかけて食う。氷あずきのあずきの代りに寒天様のものが入っている塩梅で、一杯五銭。(翌年七銭に値上。)氷あずきなど東京中探したってもうどこにもありはしない寒空に、浅草では依然として氷をかけた愛玉只を売っているのだ。夏場だけの商売かと思ったら、――と驚いたのだが、その後、往来に氷が張っている寒中でも堂々と店をつづけていて、さすがに客は滅多に見受けなかったが、それでも時々二重回しに襟巻をした客が、往来との間に何の防寒用の設備を施してないむき出しの店のなかで、夏場とおなじ縁台に腰かけて、氷をシャリシャリと食っているのが見られた。すなわち浅草では年がら年中、氷を食わせるのだ。





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