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浅草オペラ・レビュー - 「大井広介といふ男――並びに註文ひとつの事――」 坂口安吾 1942(昭和17)年7月28日

 大井広介に始めて会つたのは昭和十五年大晦日午後七時、葉書で打合せて雷門で出会つた。その晩、大井広介は至極大真面目で、自分はインチキ・レビューの愛好家で、女性美はレビューの動きに極致があると信じてゐるから、自分の娘もレビューガールにするつもりである。三つの頃からレビューを見せて仕込んでゐるが、足が長くレビューガール向きの身体のくせに、生れつき踊りの才能がなくて閉口してゐる、とこぼした。酔つ払つてゐたわけではなく、至極マジメなものである。これは又評論書きにも似合はない奇々怪々な先生だと思つて、ひどく好きになつてしまつた。そこで「現代文学」の同人になることを承諾した。





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