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浅草オペラ・レビュー - 「如何なる星の下に」 高見順 1939(昭和14)年1月-1940(昭和15)年3月

 ところで、そうした踊り子たちは、年齢はもちろんまちまちだが概して二十前のものの方が多いのに、客席からだと、ずっと齢が上のように見られる。だから楽屋で見ると、感じがまるで違うのだが、同じ楽屋でも、化粧をつけたのと、化粧を落したのとでは、これがまたまるで違うのだった。


 ドギついドーラン化粧をおとすと、ゆで卵をむいたような、つるつるの、といっても卵のように白いわけではなく、過労からか、陽に当らないからか、黄色い、いやな色をした顔が出てくるのだが、眉も何もないその顔は、あれ? と驚かれるほど、まるで子供っぽい、というよりむしろ赤ん坊のような顔なのだ。化粧という字は、化け粧うと書くが、全くもって化けさせる。(いつか女優としては経歴の古い女が、私に、――舞台化粧を施すと、お面をかぶったような感じで勇気が出てくる、気持がかわってくる、それで舞台に立てるが、素顔ではとても舞台に出られない、長い年月舞台を踏んでいるのだし自分でも相当図々しい女だとおもっているのにやっぱり駄目だ、――と言ったことがある。)





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