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浅草オペラ・レビュー - 「如何なる星の下に」 高見順 1939(昭和14)年1月-1940(昭和15)年3月

  • 執筆者の写真: 浅草文庫
    浅草文庫
  • 2018年10月18日
  • 読了時間: 1分

 浅草の舞台は大変な労働で、その舞台をやめると、踊り子は急に肥る。身体を締めつけていた箍を外した途端にぷうと膨れたといったような、その奇妙な肥り方を美佐子も示していて、まだ若いのだろうに、年増の贅肉のような、ちょっといやらしいのを、眼に見えるところではたとえば顎のあたりに、眼に見えなくてもはっきりわかるところでは腰のあたりに、ぶよぶよとつけているのに、私は「なるほどねえ」といった眼を注いだ。――蜂にでもさされたみたいな腫れぼったい眼蓋で、笑うと眼がなくなり、鼻は団子鼻というのに近く、下唇がむッと出ているその顔は、現在のむくみのようなものに襲われない以前でも、そう魅力的な顔だったとは思えない。ただ声が、――さて、なんと形容したらいいだろう、さよう、山葵のきいたのを口にふくむと鼻の裏側をキュッとくすぐられる、あの一種の快さ、あれにちょっと似た不思議な爽快感を与える声で、少なくとも私には少なからず魅力的であった。





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