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浅草オペラ・レビュー - 「如何なる星の下に」 高見順 1939(昭和14)年1月-1940(昭和15)年3月

  • 執筆者の写真: 浅草文庫
    浅草文庫
  • 2018年10月25日
  • 読了時間: 1分

 レヴィウの幼い踊り子たちは、親しい男性を呼ぶ時、いかにも人なつこい調子で「お兄さん」と言う。私は美佐子が「お姉さん」と言うのを聞くたびに、心をふるわすその甘さをそッと捉えて、「お兄さん」という言葉を、それに当てはめた。私は眼をつぶって、ひそかに、その甘い調子になぞらえて、

「――お兄さん」

と口の中でつぶやくこともあった。心のなかで、私は憧れの踊り子の美しい甘い顔、美しい甘い姿態を思い描いていた。ああ、憧れの彼女が、――あのいとしい小柳雅子が私に向って「お兄さん」と言ってくれるのは、いつの日か。私はその日のくるのを、どんなに待ち望んでいたことだろう。だが同時に、そうした日のくることが何か恐い感じでもあった。なぜかそうした日の来ないことを願ってもいた。……





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