浅草田圃・奥山・見世物 - 「鴎外の思い出」 小金井喜美子 1955(昭和30)年10月
- 浅草文庫
- 2018年10月2日
- 読了時間: 1分
見世物小屋のある方へ行って、招牌を見て歩きます。竹の梯子に抜身の刀を幾段も横に渡したのに、綺麗な娘の上るのや、水芸でしょう、上下を著た人が、拍子木でそこらを打つと、どこからでも水の高く上るのがあります。犬や猿の芸をするのもあったようです。尤も一々這入ったのではありません。中の見物席は、ただ地面に筵が敷いてあるだけとか聞きました。
その裏手は一面の田圃でした。新花屋敷が出来て、いろいろの動物が来たり、菊人形が呼び物になったのは、ずっと後のことです。
Comments