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装い・服装 - 「砂がき 夏の街をゆく心」 竹久夢二 1940(昭和15)年10月15日

更新日:2019年7月25日

 このあたりを歩く男も女も、千種萬樣で、麻の葉の赤いメリンスの單衣に唐人髷を頭にのつけて、鈴のついた木履をはいて眉を落した六つばかりの女の子の手を引いてゆく耳かくしをゆつた姉らしい女は女給ででもあらうか、素足の足の裏が黒い。

 田村屋かちくせんあたりの小紋風な浴衣をきた好い女房が、これはまた何んとしたことかドロンウオークの長襦袢をきてゐる。下駄も鹿嶋屋がなくなつてからこのかた、この女も蝶貝のえせ表現派模樣をちりばめたごてごてしたものをはいて歩いてゐる。

 このあたりの三味線を奏する職業婦人はさすが土地柄だけに、この種の婦人特有のあの襟をにべもそつけなくきつちり首へ卷きつけるやうに合はせるくせがなく、肌をほの見せてゆるやかに襟を合せてゐるのは好もしい。





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