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長國寺・鷲神社・浅草酉の市 - 「如何なる星の下に」 高見順 1939(昭和14)年1月-1940(昭和15)年3月

  • 執筆者の写真: 浅草文庫
    浅草文庫
  • 2018年11月6日
  • 読了時間: 1分

 熊手には宝船、的矢、玉茎、金箱、米俵、お多福面、戎大黒などが飾り付けてあるが、これが千差万別で、どれが出船でどれが入船か見たところではさっぱりわからない。熊手を買って聞いてみればいいわけだが、口あけの店で小さな熊手を買うのも気がひけ、「――宝船に何か区別があるのかもしれない。舳が左になってたり右になってたりするんで区別するのかもしれない」などと言って、素通りしてしまった。しかし熊手には、小さいのになると宝船のついてないのがあり、ついていてもそのような区別は見られなかったから結局わからずじまいであった。熊手の代りに笹枝に芋を貫いたのと切山椒を買って美佐子のお土産にし、熊手は鷲神社でそれぞれが買った。

「あたし去年もこの熊手。ほんとうは倍のを買わなきゃいけないんだけど……」

「僕もそうだ」





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