吉原病院の方へ抜けて、吉原に入った。仲の町は、お酉さまへ行く人、帰りの人で、ごった返していた。「角海老」の前庭を、素人の女たちが、見物するのはこの時とばかりに、ひやかしの男に混ってゾロゾロと通り抜けている。そういう場合どういうものか、惨めな側にすぐ自分の心を置く癖の私は、――同じ女と生れてきながらいかなるめぐり合わせか、自分のせいではなく苦界に身を沈めねばならなかった女が、同じ女に、のんきそうに遊んでいる女に見物される苦しみを考えると、それはあまり気持のいい風景ではなかった。
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