隅田川・大川 - 「夜の隅田川」 幸田露伴 1902(明治35)年9月
- 浅草文庫
- 2018年10月2日
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季節にもよるが、鰻を釣るので「珠数子釣り」というをやらかして居る。これは娯楽にやる人もあり、営業にやる人もある。珠数子釣りは鉤は無くて、餌を綰ねて輪を作る、それを鰻が呑み込んだのを※[#「てへん+黨」、第3水準1-85-7]網で掬って捕るという仕方なのだ。面白くないということはないが、さりながら娯楽の目的には、ちと叶わないようなものである。同理別法で櫂釣というのを仕て居る人もある、此の方が多く獲れる。鉤を用いて鰻の夜釣をして居る人もある。時節によって鱸を釣ろうというので、夕方から船宿で船を借りて、夜釣をして居る人がある。その方法は全く娯楽の目的で、従って無論多く捕れるという訳にはゆかぬ。
大きな四ッ手網を枝川の口々へかけているものも可なり有る。これには商売人の方が九分であろう。雨の後などは随分やっているものだ。また春の未明には白魚すくいをやるものがある。これには商売人も素人もある。

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