top of page

隅田川・大川 - 「​大川の水」 芥川龍之介 1912(明治45)年1月

  • 執筆者の写真: 浅草文庫
    浅草文庫
  • 2018年9月12日
  • 読了時間: 1分

 この大川の水に撫愛される沿岸の町々は、皆自分にとって、忘れがたい、なつかしい町である。吾妻橋から川下ならば、駒形、並木、蔵前、代地、柳橋、あるいは多田の薬師前、うめ堀、横網の川岸——どこでもよい。これらの町々を通る人の耳には、日をうけた土蔵の白壁と白壁との間から、格子戸づくりの薄暗い家と家との間から、あるいは銀茶色の芽をふいた、柳とアカシアとの並樹の間から、磨いたガラス板のように、青く光る大川の水は、その、冷やかな潮のにおいとともに、昔ながら南へ流れる、なつかしいひびきをつたえてくれるだろう。




最新記事

すべて表示
隅田川・大川・屋形船 - 「残されたる江戸」 柴田流星 1911(明治44)年5月

川びらきの夜に始まりて、大川筋の夕涼み、夏の隅田川はまた一しきり船と人に賑わうをつねとする。  疇昔は簾かかげた屋形船に御守殿姿具しての夕涼み、江上の清風と身辺の美女と、飛仙を挟んで悠遊した蘇子の逸楽を、グッと砕いて世話でいったも多く、柳橋から枕橋、更には水神の杜あたりまでも

 
 

Comments


Commenting on this post isn't available anymore. Contact the site owner for more info.
bottom of page