隅田川・大川・屋形船 - 「亡び行く江戸趣味」 淡島寒月 1925(大正14)年8月24日-26日
- 浅草文庫
- 2018年9月22日
- 読了時間: 1分
江戸から東京への移り変りは全く躍進的で、総てが全く隔世の転換をしている。この向島も全く昔の俤は失われて、西洋人が讃美し憧憬する広重の錦絵に見る、隅田の美しい流れも、現実には煤煙に汚れたり、自動車の煽る黄塵に塗れ、殊に震災の蹂躙に全く荒れ果て、隅田の情趣になくてはならない屋形船も乗る人の気分も変り、型も改まって全く昔を偲ぶよすがもない。この屋形船は大名遊びや町人の札差しが招宴に利用したもので、大抵は屋根がなく、一人や二人で乗るのでなくて、中に芸者の二人も混ぜて、近くは牛島、遠くは水神の森に遊興したものである。

Comentários