隅田川・大川 - 「東京短信」 小熊秀雄 1935(昭和10)年隅田河 隅田河 腐臭は 水面をただよひ 罐詰のカン、 赤い鼻緒の下駄、 板つきれ、 ぐるりばかりになつた麦藁帽 青い瓶、 などがポカンポカンと浮いてくる 市民の生活の断片と 人間の哀しい運命の破片 波は河岸を 汚れた舌のやうに ひたびたと舐めてゆく 浅草文庫 「東京短信」 小熊秀雄 1935(昭和10)年
隅田河 隅田河 腐臭は 水面をただよひ 罐詰のカン、 赤い鼻緒の下駄、 板つきれ、 ぐるりばかりになつた麦藁帽 青い瓶、 などがポカンポカンと浮いてくる 市民の生活の断片と 人間の哀しい運命の破片 波は河岸を 汚れた舌のやうに ひたびたと舐めてゆく 浅草文庫 「東京短信」 小熊秀雄 1935(昭和10)年
隅田川・大川・屋形船 - 「残されたる江戸」 柴田流星 1911(明治44)年5月川びらきの夜に始まりて、大川筋の夕涼み、夏の隅田川はまた一しきり船と人に賑わうをつねとする。 疇昔は簾かかげた屋形船に御守殿姿具しての夕涼み、江上の清風と身辺の美女と、飛仙を挟んで悠遊した蘇子の逸楽を、グッと砕いて世話でいったも多く、柳橋から枕橋、更には水神の杜あたりまでも
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