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隅田川・大川・花見 - 「夜の隅田川」 幸田露伴 1902(明治35)年9月

更新日:2019年7月17日

 大川も吾妻橋の上流は、春の夜なぞは実によろしい。しかし花があり月があっても、夜景を称する遊船などは無いではないが余り多くない。屋根船屋形船は宵の中のもので、しかも左様いう船でも仕立てようという人は春でも秋でも花でも月でもかまうことは無い、酒だ妓だ花牌だ虍丘栄だと魂を使われて居る手合が多いのだから、大川の夜景などを賞しそうにも無い訳だ。まして川霧の下を筏の火が淡く燃えながら行く夜明方の空に、杜鵑が満川の詩思を叫んで去るという清絶爽絶の趣を賞することをやだ。



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隅田川・大川・屋形船 - 「残されたる江戸」 柴田流星 1911(明治44)年5月

川びらきの夜に始まりて、大川筋の夕涼み、夏の隅田川はまた一しきり船と人に賑わうをつねとする。  疇昔は簾かかげた屋形船に御守殿姿具しての夕涼み、江上の清風と身辺の美女と、飛仙を挟んで悠遊した蘇子の逸楽を、グッと砕いて世話でいったも多く、柳橋から枕橋、更には水神の杜あたりまでも

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