top of page

隅田川の渡し - 「残されたる江戸」 柴田流星 1911(明治44)年5月

  • 執筆者の写真: 浅草文庫
    浅草文庫
  • 2018年10月11日
  • 読了時間: 1分

 しかし、隅田の渡しで古いのは浜町三丁目から向河岸への安宅の渡し、矢の倉と一ノ橋際間の千歳の渡し、須賀町から横網への御蔵の渡し、待乳山下から向島への竹屋の渡し、橋場、寺島村間の白髭の渡し、橋場、隅田村間の水神の渡し、南千住から綾瀬への汐入りの渡しなぞで、その最も古い歴史を有すのは竹屋の渡しだ。

 この渡し、元は待乳の渡しといったものなのを、いつの頃からか竹屋という船宿の屋号がその通り名となり、百五十年来の名所に二つの呼び名を冠するに至ったのだ。

 花の向島に人の出盛る頃は更にも言わず、春夏秋冬四時客の絶えぬのはこの竹屋の渡しで、花の眺めもここからが一入だ。

 されど趣あるは白髭の渡しもこれに譲らず、河鹿など聞こうとには汐入りの渡し最もよかろうと思う。




最新記事

すべて表示
隅田川の渡し - 「鴎外の思い出」 小金井喜美子 1955(昭和30)年10月

毎日急ぎ足で学校へ通う道をぶらぶら歩いて、牛の御前の前を通り、常夜灯のある坂から土手へ上り、土手を下りて川縁へ出ると渡し場です。ちょうど船の出るところでした。 私は真中にある仕切りに腰を下します。乗合はそんなにありません。兄様は離れたところに立っていられます。中流に出ますと...

 
 

コメント


この投稿へのコメントは利用できなくなりました。詳細はサイト所有者にお問い合わせください。
bottom of page