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仲見世 - 「​浅草公園 --或シナリオ--」 芥川龍之介 1927(昭和2)年3月14日

  • 執筆者の写真: 浅草文庫
    浅草文庫
  • 2018年9月17日
  • 読了時間: 1分

 斜めに見た射撃屋の店。的は後ろに巻煙草の箱を積み、前に博多人形を並べている。手前に並んだ空気銃の一列。人形の一つはドレッスをつけ、扇を持った西洋人の女である。少年は怯ず怯ずこの店にはいり、空気銃を一つとり上げて全然無分別に的を狙う。射撃屋の店には誰もいない。少年の姿は膝の上まで。

 西洋人の女の人形。人形は静かに扇をひろげ、すっかり顔を隠してしまう。それからこの人形に中るコルクの弾丸。人形は勿論仰向けに倒れる。人形の後ろにも暗のあるばかり。


 前の射撃屋の店。少年はまた空気銃をとり上げ、今度は熱心に的を狙う。三発、四発、五発、——しかし的は一つも落ちない。少年は渋ぶ渋ぶ銀貨を出し、店の外へ行ってしまう。



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