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「浅草とは?」 - 「浅草哀歌」 北原白秋 1916(大正5)年7月

  • 執筆者の写真: 浅草文庫
    浅草文庫
  • 2018年9月27日
  • 読了時間: 1分

 奥山の四時過ぎの日こそさみしけれ。  あたたかにうち黄ばむ写真屋の古きならびは、  半盲目の病児らの日向ぼこをば見るごとく、  掲げたる鈍き写真のうちにくはせ者の女役者の顔のみ白く、  罎ならぶ窻のそば、露台にダアリヤの花ただひとつ赤けれども、  なべてみな色もなし、入口の静かなる空椅子のうへに、  みよりなき黒猫ぞひとりまた背を高めたる。

 見るものの凡てみな『過ぎし日』のごとくさびしく、  疎ましき『忘却』の腐蝕よりのこされしものの痛さよ。  げに、白き横文字はその屋根に、いかがはしけれ、  The Art Photograph とぞ読まれぬる。




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