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浅草の食・浅草名産・銘菓 - 「鴎外の思い出」 小金井喜美子 1955(昭和30)年10月

 小路を這入った処に小料理屋があって、新栗のきんとんがおいしいというので、その時節にはよく立寄りました。お留守をした人におみやげにするのです。五重塔のある側に綺麗なお汁粉屋があって、そこのお雑煮のお澄ましが品のいい味だというので、お母様は御贔屓でした。お兄さんは、お餅が小さくて腹に張らないから嫌だといわれたとて、皆笑いました。

 雷門前では、お父様へのおみやげに、かりん糖や紅梅焼を買います。お父様はお茶をお飲みの時、「ちょっとした菓子よりこの方がよい」と、和三盆を小匙に軽く召上るのですから、おみやげはほんのお愛想です。



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