馬車鉄道・路面電車 - 「三筋町界隈」 斎藤茂吉 1937(昭和12)年1月
- 浅草文庫
- 2018年10月6日
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鉄道馬車も丁度そのころ出来た。蔵前どおりを鉄道馬車が通るというので、女中に連れられて見に行ったことがある。目隠しをした二頭の馬が走ってゆくのは、レールの上を動く車台を引くので車房には客が乗っている。私が郷里で見た開化絵を目のあたり見るような気持であったが、そのころまでは東京にもレールの上を走る馬車はなかったものである。この馬車は電車の出来るまで続いたわけである。電車の出来たてに犬が轢かれたり、つるみかけている猫が轢かれたりした光景をよく見たものであるが、鉄道馬車の場合にはそんな際どい事故は起らぬのであった。

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