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浅草にまつわる、

小説・随筆・詩・俳句

 わたしは今戸の寮の、昔の豪華譚に憧れて、吉原や小塚っ原へ遊んでは、翌朝千住から船で下って、今戸のみやこ鳥のいる風景を眺めた。
 こうして、私は救うことのできない遊蕩に身を持ち崩した。故郷の父から送ってくる金など、もちろん足りようはずがない。友達から先輩にいたるまで、手の及ぶかぎり迷惑をかけた。果ては誰も顧みるものがなくなった。

 悲しい『夜逃げ』となったのである。

佐藤垢石

1888(明治21)年6月18日-1956(昭和31)年7月4日

評論家

佐藤垢石|浅草文庫
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