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浅草にまつわる、

小説・随筆・詩・俳句

 椿岳の浅草生活は維新後から明治十二、三年頃までであった。この時代が椿岳の最も奇を吐いた盛りであった。

 伊藤八兵衛と手を分ったのは維新早々であったが、その頃は伊藤もまだ盛んであったから椿岳の財嚢もまたかなり豊からしかった。浅草の伝法院へ度々融通したのが縁となって、その頃の伝法院の住職唯我教信と懇ろにした。この教信は好事の癖ある風流人であったから、椿岳と意気投合して隔てぬ中の友となり、日夕往来して数寄の遊びを侶にした。

内田魯庵

1868(慶應4)年4月5日/4月27日-1929(昭和4)年6月29日

小説家、評論家、翻訳家

内田魯庵|浅草文庫
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